座談会形式で  介護施設の訪問記事




高齢者施設を訪ねて
訪問先;特別養護老人ホーム・大門園
見出し;歯科の関与で口臭、誤嚥性肺炎が激減
Reporter 副会長 平田米里(野々市町・歯科)
特別養護老人ホーム・大門園・・・〒920-2322石川県白山市佐良ロ123
TEL076-255--5221・・FAX076-255-5137

 介護保険導入以来、様変わりしたといわれる高齢者施設を取材する新企画は、金沢春日ケアセンター (二月号掲載)を皮切りに、今回第二回目の取材である。
 訪れたのは旧吉野谷村にある花ゆうゆうの隣に位置する特別養護老人ホームの大門園で、 リポーターは当施設の嘱託歯科医を勤める平田副会長。
 大門園では多忙ながらも四月三日(木)の午後に時間を取ってくださり、 詳しいお話しと共に、施設内をくまなく見学させていただいた。
取材に対応いただいたのは、大門園施設長の山岸忠志さん、主任看護職員の野村和美さん、 主任介護職員の原真さん、介護職員の山地明美さん、 そして、大門園居宅サービスセンター管理者の木村加代子さん、 介護支援専門員の福田正成さんの六人。
 保険医協会からは平田副会長のほかに、喜多徹副会長(野々市町・内科)、 西川忠之理事(能美市・泌尿器科)が出席し、事務局の杉野、橋爪が同行した。(事務局)

 今回は、大門園のみなさんの発言がそれぞれ重要で、 できるだけその内容を伝えたい思いから、少々長くなりますが、インタビュー形式により、 発言の要旨をまとめる形で報告します。

 日ごろ、歯科の嘱託医として何度も施設を訪れ、 わきあいあいとお話ししているのですが、今回は、会議室でまとまったお話を伺うことができ、 私にとって、いつもに増して有意義な時間でした。
大門園から六人、協会側から五人と大勢の参加となりましたが、 施設長さんをはじめ、参加者の人柄の良さもあってか、 とくにかしこまることもなく、第一線の現場に踏み込んだ内容について、 本音が語り合えたように思います。(聞き手・平田米里)

■まず、施設の特徴についてお聞かせください。
【山岸施設長】利用者のほとんどが、旧五村を中心とした白山市住民が占めること、 地元のボランティアを受け入れるなど地域との結びつきが強いこと、 加えて、介護実習生の受け入れなど福祉人材の育成機関としての側面が挙げられる。

■介護保険の導入以来、業務やサービスなどにおいてどのような変化がありましたか。
【野村主任看護師】一九九二年に三十床で始めた時、在宅で看護できるような方が多く、 介護や看護にはそれほど苦労はしなかった。
しかし、ここ五年ほど前から、医療度の高い方が多くなったし、胃瘻の方が多くなったと思う。
【山岸施設長】入所申請は点数化されていて、結果として要介護度四、五の人が多い。
ここ数年職員数は変わらず、介護職員も一対二・三と手厚い。
【原主任介護職員】勤務し始めた一九九六年ごろは、特浴の機械はあったがほとんど使っていなかった。
近年、入居者が重度化したためと思われるが、現在ではその利用が二十人を超えている。外出などの行事も簡略化されてきた。
【山地介護職員】食事介助も同じく大変。

■何人もの利用者に同時に食事介助をされていて、すごい技であると感心して見ていましたが、それについてお聞かせください。
【山地介護職員】食事介助技術が高いから能率よく食事介助ができるのでなく、 入所者の身体の状態や機能を理解し、予測ができるようになると、短時間、効率的に介助ができるようになる。
また、職員の技能の習得に関しては、新人時に、主任らが二週間ほどの教育期間を設け指導に当たっている。

■どんな時にやりがいを感じますか。
【福田介護支援専門員】職員みんなで、入居者の処遇について真剣に検討し、方針を決め実行している。
その結果、家族の方が喜んでくれたり、排泄が「おむつ」から「トイレ誘導」へと機能改善したときなどに喜びを感じる。

■看護師の業務は変わりましたか。
【野村主任看護師】常勤看護師三人のうち常時対応できるのは二人なので、その二人は平日も休日も二十四時間拘束されている状態。
お風呂に入るときも眠るときも、携帯電話を離せない。
ターミナルに関しては、病院で亡くなる方は一年で数人。年に十二人〜二十人ですが、ほとんどの方は施設で看取りをしている。

■介護職員は足りていますか。
【原主任介護職員】介護職員の人数は、一応、配置基準を満たしている。
しかし、近年は特に離職率が高いように思う。特に、経験年数五年ほどの慣れた人の離職が痛手。
【喜多副会長】大きな理由として、介護職員の給与が低すぎることが大きいと思わざるを得ない。
とくに男性の介護職員が、今の給料では生活できないと思っているようだ。 これは二年前の介護保険法の改定以来、さらに顕著になったと思う。
看護師不足に関しては、大病院が例の「一対七採用」で大量採用した結果、看護師が枯渇し、 小さな病院や施設があおりを食ったという背景があると思う。

■居宅はどんな状況ですか。
【木村居宅サービスセンター管理者】病院の入退院時の連絡調整が在宅介護では大切だと感じている。
また、介護保険を利用できずに困ったケースも体験している。
別のケースでは、要支援の方で週一回のサービスプランなのに、緊急性があるとの判断で一週間連日ヘルパーを派遣した。 しかし、一カ月単位の料金体系(月額制)なので、このような場合はサービス事業所が持ち出しとなる。 状態の急変に応じた柔軟な運営ができるように制度面の改善をして欲しい。
【喜多副会長】白山市に統合されたメリットは?
【山岸施設長】白山市に統合されてから、きめ細かなサービスができるようになったと思う。
しかし、一方で配食サービスへの補助は減額されたので、利用者の負担金が二食で四百円増え、困っている人が多いと聞く。
【木村居宅サービスセンター管理者】デメリットの部分も漏れ聞こえてくるが、そればかりではなく、白山市独自のよいサービスもある。たとえば、低所得者が在宅サービスを受けている場合、申請すると、自己負担分(ショートステイ・食費などの実費を除く)の四〇%が戻ってくるサービスがある。また、在宅で、介護保険の利用率が五〇%以内なら、要介護度四、五に限って、家族などの介護者に一カ月五千円を支給するサービスもある。 【喜多副会長】大門園には浦崎裕之先生(金沢市額新保) と平田先生が嘱託歯科医として関与されているが、入所者の口腔状態に変化は?
【野村主任看護師】以前は、熱発で鶴来病院に入院すると誤嚥性肺炎の診断を受ける人が多かったが、 歯科の先生の関与が始まった二〇〇一年ごろからは、肺炎になる人が少なくなった。
職員では困難な人を対象に、歯科衛生士にケアしてもらっている。
【福田介護支援専門員】以前は口臭がひどかったが、今は激減している。

■国や自治体に望むことはありますか。
【山岸施設長】来年の介護保険の改正で、施設経営へのダメージが予測される。 事業の縮小や収益を増加するような事業を考えざるを得ない。
理事会では収入を上げるために新型ユニット化が提案されたが、設備投資が大きすぎること、 入所者の自己負担が大きすぎるとの判断で、理事者の賛同が得られなかった。 入居費用が月に八万円くらいの施設が存在することに重要な意味がある、との判断も働いた。
また、国は全国の在宅介護支援センターを、地域包括支援センターに移行させた。 白山市のような行政直営型の地域包括支援センターでは、 センター運営に関する人件費に必要以上に大きな予算が計上されているように思う。
一方で予防プランの料金を非常に安く設定するなど、介護の現場には効率ばかりを求めているのはいかがなものか。
【西川理事】前出の居宅での緊急対応事例に関して、後からでも介護申請の変更届はできるが簡単ではないこと。 また、介護と医療は車の両輪として機能すべきものなのに、 医療保険は急変に対応できる制度になっているが、介護はそうはなっていないことが問題で、改善すべきと思うが・・・。
【福田介護支援専門員】居宅介護報酬と予防介護報酬に開きがあり、 制度上、要支援者宅へ訪問してのモニタリングは最低三カ月に一回と規定されているが、 過疎化・高齢化が進む地域性から独居・高齢者世帯が多く、 生活にかかわる相談が多岐にわたっているので、大門園独自の取り組みとして 「最低、月に一回は訪問しよう」ということにしている。
【喜多副会長】二年前の介護保険法の改定で、新予防給付に機械的な審査基準が働き、 要介護一が要支援二と要介護一に分けられたことによって、サービスが減じられるなど、大きく抑制された。
そのため、介護保険の利用率が低下し、来年は保険料を引き上げる必要がなくなったくらいの抑制効果があったと聞く。
結果として、現場の介護職員や、利用者にしわ寄せをもたらすことになったと実感している。
【木村居宅サービスセンター管理者】大門園での赤字部門は、居宅支援事業所だけ。 ケアプランの作成料金を引き上げて欲しい。特に、介護予防プランの作成料金が安すぎる。
【野村主任看護師】施設看護師の定員を増やして欲しい。
最近の重症化で、吸痰や点滴の頻度が多くなったことに加え 、九〇%以上がここでターミナルを迎えることを考えると、三人の看護師数は少ない。
ターミナルを迎えた方の家族方からは、良い評価を受けているのは嬉しいが・・・。
【山地介護職員】ワーカーの人数を増やして欲しい。
利用者の重度化で、入浴も以前は午前中で終えていたのが、今は一日を要する。
また、レクリエーションなどの楽しみを見いだせるようなサービスが、どうしても減少傾向になっている。
食事をして、排泄をして、寝ていただくだけでは、「生活の場」として機能しているとは言えない。
もっと入居者の方の笑顔が見られるような楽しみを見いだしたいと思っているのに、ルーティンワークに追われる毎日はつらい。
【原主任介護職員】大門園は多床室が多く、個室も従来型だから格安。利用者には喜ばしいことだが、 それは逆に施設にお金が入らない状況をもたらしている。
従って、経営者は給与を上げられないとか、人員を増加する余裕がないと判断しているようであるが、 この状況で大変な思いをしているのは現場職員だということを強くアピールしたい。
数年前、年間百二十三日あった休日数が、今年度は百十四日に減っている。
【山岸施設長】行政からの補助金がない現状であるが、経営者としては、 いろいろ知恵を絞って、収入を増やすような努力をしていきたい。
■労働条件の厳しい中で、職員の皆さんが日々工夫を重ね、懸命に介護している姿が印象的でした。
私の当初のもくろみは、中規模施設での要介護高齢者を取り巻く環境について、 歴史的な経過を踏まえ、現状分析から問題提起や国・自治体への要望を語っていただくことで、 施設介護が抱える現状を明らかにしたいというものでした。
果たして目的は果たせたでしょうか。










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