レセプトオンライン化義務




オンライン請求義務化で国民と医療機関の国家管理狙う

保団連政策解説  07年6月21日

 医療者の中には、診療報酬オンライン請求の義務化について、 「義務化には反対だが、IT化は時代の流れ」であり当然とする意見もある。
確かにITの活用目的によっては、情報の収集、分析、 活用等により医療に限らず経済、社会全般に有用であろう。
しかし、その活用目的が、すべての国民を対象に、 医療機関への受診内容や健診データなど、個人の情報を生涯にわたって国家管理し、 それをもとに疾病別の医療標準化などによる医療費抑制と医師・歯科医師の 診療行為や報酬も規制し、さらには、 それらの情報が営利企業などに利用されるとしたらどうなるか。

政府は、「IT戦略本部」を中心に、ITによる医療の構造改革によって、 国民と医療機関の国家管理をめざし、その重要な入口として 「診療報酬レセプトオンライン請求の義務化」を強引に進めようとしている。

昨年3月閣議決定の「規制改革・民間開放推進3か年計画」では、 「全レセプトデータを国の責任において確実に蓄積、集約し、 全国規模のナショナル・データベースを構築する」 とデータの国家管理を述べる一方、「(データを)民間等も含め活用する際、 過度に厳重な要件を課していたずらに利用を制限することのないよう」と、 データの民間利用の方向を示している。

4月3日、経済同友会からの提言「活力ある経済社会を支える社会保障制度改革」の中で、 高齢者医療制度の「目指すべき医療の提供体制」として、 「カルテ、レセプトの電子化、オンライン化を推進し、 蓄積された診療データから標準医療を定める」ことを打ち出している。

4月20日、規制改革会議では、 オンライン化の早期促進のため診療報酬支払い期間の短縮など金銭的誘導の提言を出した。 保険者による直接審査・支払いの早急な検討の考えも出している。

5月15日、柳沢厚労相が経済財政諮問会議に提出した 「医療・介護サービスの質向上・効率化プログラムについて」では、
@開業医の役割として往診・訪問診療、休日・時間外診療の重視。 総合的な診療能力を持つ医師の養成の仕組みの検討、
Aレセプトオンライン化の着実な実施、
B健康ITカード(仮称)の導入。社会保障全体を視野に入れたシステムの基本構想づくり、
CIT化等を通じた重複、不要検査の是正や健診の標準化。診療報酬の包括払いの促進、
D診療報酬の包括化の普及に伴い保険医療機関等の指導・監査をさらに強化、 などが示されている。

これらの流れの中で、国民には、 「ICカードでの社会保障番号制」の導入 (納税者番号としての活用も検討されており国民総背番号制にもなる)、 開業医には「人頭登録医制」の導入、病院等は、 急性期や慢性期の入院など機能分化・再編による医療供給体制の抜本見直しをめざしている。
 このような中で実施される診療報酬オンライン請求は、 さらなる医療費削減のための「前提条件」であり、 審査、支払や保険診療の在り方そのものにも重大な影響をもたらすものである。
また、IT化を具体的にすすめる周辺環境の整備が不十分な現状で、 診療報酬オンライン請求を強制的に導入すれば、 長年にわたり地域医療を支えてきた保険医療機関の存続や、 医療の安全確保、良質な医療の提供にも大きな影響を及ぼすことになる。
さらに、セキュリティ確保に対する対応が不十分であり、 患者・国民の病名や健診データなどプライバシーの漏洩、 流用につながる危険性があるなど重大な問題を含み、 患者・国民にとって必要な真の保険医療の発展にはつながらない。
このように多くの問題を含んだ政府の診療報酬オンライン請求の計画には反対であり、 患者・国民にも宣伝を広める中で抜本的な見直しを求める。

保団連は、患者・国民にとって必要な真の保険医療の発展につながる 医療のIT化を否定するものではない。
迅速な医療情報の共有・発信や事務管理の効率化、 国民全体の疾病構造の分析などに活用し、医療費の真の適正化に資することは、 今後いっそう重要になっている。
医療「構造改革」推進の「前提条件」として強引に進められようとしている 今回の政府の診療報酬オンライン請求計画は、 その目的からして患者・国民の不利益になるばかりか、真の保険医療の発展にはつながらない。
私たちは真の保険医療の発展につながる医療IT化を望むものである。
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「社会保障個人会計」と「社会保障番号」の混同について、権丈善一先生のわかりや すい文章がありました。
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勿凝学問84
「朝あしたに何も知らねども夕ゆうべに書くこと可なり」を座右の銘とする人たち 年金カードから社会保障番号に変化していく報道をながめながら
慶應義塾大学 商学部教授 権丈善一2007年6月16日
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/korunakare84.pdf

(途中略)
ちなみに、今朝の『読売新聞』で紹介されていたアメリカやスウェーデンの社会保障 番号は、かつて(そして今後も?)経済財政諮問会議が日本に導入したがっていた社会保 障個人会計――しばしば諮問会議議員でさえ社会保障個人会計と社会保障番号を(無意識 のうちにか意図的にか)混同した素人論議をしているから話しがややこしくなる――とは 異なる。
社会保障個人会計でなければ、社会保障の個人レベルでの負担と給付の一元 化はできず、アメリカの社会保障番号(SSN: Social Security Number)は、「基礎年金 番号+納税者番号+住民基本台帳番号」の役割程度しかもっておらず、SSNでは社会保障 全般(現金給付+現物給付)に関する個人レベルでの負担と給付の関係など把握できない。
そしてだいたいもって、アメリカやイギリスなどアングロサクソン系諸国におけ るSocial Security(社会保障)という言葉には、医療や介護などの現物サービスがはじ めから含まれていない。
ゆえに、彼の国の研究者たちにわたくしの専門を、Social Securityと言おうものなら、彼らはわたくしを年金の専門家だと思うことになる。
そ れでは不本意なので、Social Security and Health EconomicsとかSocial Policy、は たまたEconomics of Welfare Policyと言ったりと、説明が実に面倒なのである。










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