口腔ケア―研究その2




 特別養護老人ホームにおける口腔管理―普遍的管理システムを求めて
第2報 (昨年の続報) 
口腔ケア指導を実施した2施設(特養)の比較から
                   平田米里  浦崎裕之 (共同研究)

昨年は歯科医師2名、歯科衛生士1名で施設単位の口腔管理する方法を模索した報告をしました。ただ、やった、やっているでは評価の対象にならないので、それを評価する方法を検討したいと考え報告させていただきます。
口腔ケアの必要性が 叫ばれて久しい。
しかし、どの程度のケアがどんな疾患に、どの程度有効かについては、いくつかの報告を見ることはありますが、いまだ充分な確証を得るにいたっていないように思います。口腔ケアといっても、毎日行うものですから、方法が簡単である必要があります。しかし、充分な効果が期待される方法はどのレベル、どんなシステムなのか、まだまだ研究の余地があると思う訳です。対象者の年齢、疾患別、病態の程度別や在宅、病院、特養など介護環境別など、すべてを網羅した大規模な調査が待たれますが、他人頼みでは待ちきれなくて、自己流にでも良いからと少しだけ始めてみました。全国の同士を募ります。

さて、実践にあたり、特養等に於ける歯科サイドの口腔ケアの実施や、寮母さんに対する指導の成果を如何に評価するかは非常に困難な問題と感じています。歯牙や歯肉や義歯、舌等の健康度、清潔度を判定する際においても、強度の障害や痴呆をもった人に対して、比較的容易で普遍性を有する、コンセンサスのある指標が見当たりません。

例えば、食物残渣を例にとれば、食事後何時間に調査すると定めて食物残渣の量、面積、部位などで調査すればよいのでしょうか。それとも有無だけの判別でよいのでしょうか。また、義歯の清掃度を判定するには、義歯の内面や外側に付着した歯石、プラークをいかに定量化、数量化するか、そして正確を期した再現性のある調査を実施したとして、どの項目とどの疾患との相関が予測されるのか、可能性あるものはすべて調査するとするには、あまりにも範囲が多岐にわたり、量的に多く、全部を調査するには、個人開業医のレベルでは困難すぎることが予測されてしまいます。血液検査とは言わぬまでも、せめて、歯周疾患のBOPくらいと思いますが、対象者が痴呆者や高度の障害者では、検査そのものが対象者に負担をかけ拒否されがちです。無理に実施するには、人的、時間的、設備的に困難と予測され、実施しませんでした。

それで、今回は、調査が簡単な、口臭と舌苔等に的を絞って、大雑把なイメージとして捉えることを主眼とした調査結果を報告します。口臭などは、不確かな基準、再現性に乏しいとされるかもしれませんが。それでも、官能試験がもっとも確実な試験法とされているようですから、多少はよいかなと考えています。もっとも、ボードに筒をつけたものを用意した訳ではありませんが。

また、前回報告したA施設の実践例を知ったB施設のある一人の看護婦さんが同じようなケアをB施設でも行いたいとの依頼が、約1年半前にあり、少し改良を加えた方法で指導した資料があります。そこで、その2施設を比較しながら口腔ケアの方法と口腔の変化について報告させていただきます。
( 肺炎の変化などは数字で評価するには対象者が少なくて出来ませんでした。
交合支持域や義歯の有無による下痢なども前回と同じく差異はありませんでした。 )

結果報告とA,B施設別の比較  
簡単な数字の変化を施設別に挙げておきます。

A施設(特養)
以下の数字は、追跡調査ができた人たちを対象にしています。
1、 口元に近づくと口臭がする 
(2000年4月 → 2002年1月、約20ヶ月経過)
    66人中 14人→9人 
2、 舌苔 
    66人中 15人→6人    

『B施設(特養)』 
1、 口元に近づくと口臭がする 
(2001年3月→2002年2月、約11ヶ月経過)
 83人中 16人→4人
2、 舌苔 
   67人中 32人→4人
3、 食物残渣 
   67人中 35人→3人

考察
A施設とB施設を比較すると、数字的にはそれほどの差異はないようです。
しかし、ホローアップ検診において、調査者には明らかにB施設の方が口腔ケアが行き届いていると感じさせました。
但し、ベースライン時点の状態がAとBで同じかどうかを判断する基準を持たないので効果の比較は困難です。
 
A施設とB施設との大きな差異の一つは、寮母さんへの指導の違いであった。
歯周疾患を積極的に取り組んでいる歯科医院はおわかりの事と思いますが、担当者制にすると効果的であることは良く知られています。B施設はそれを応用したわけです。
具体的には
B施設では、ヘルパーの中で、口腔ケアの技術レベルを高めたいと言う希望者5人が名乗りを挙げ、施設の中で特にケアが難しいと思われる対象者をピックアップし、その方たちについて、歯科衛生士が行う方法を見学し、その後、マンツーマンで指導を数回ずつ受けた。
つまり、指導、教育のおかげで、寮母さんたちが口腔ケアの方法を身につけ、見る目ができた為、施設全体として、高いレベルで安定した状態を維持できるようになったことが大きなポイントだと思います。

二つ目の違いは、入所者の病態の差異が大きいようです。
A施設はその地区にただ一つの特養で、冬季は雪深くなる山間部にあります。
近くに大きな病院がなく、また、あったとしても入院を喜んでくれない状況ですから、便宜的に本来は病院にいるべき状態の方も特養に入所させているケースが多く、全体としては重病人が多く入所しているようです。例えば、胃ロウで言うと、この1,2年の間に少しずつ増加し、約80人の入所者のうち、14人前後にもなり、肺炎や全身状態の悪化で少し離れた病院に入退院を繰り返している方も多いようです。(B施設は胃ロウが少ない、Aは県内で2番目目の高率ということです)
    








このホームページの著作権は平田歯科医院に帰属します。
Copyright (c) 2002 Dental hospital HIRATA. All rights reserved.