舘村卓 講演会 報告記事その2      (平田米里)

 

講演は内容豊富で、3時間15分にも及ぶ長いものでしたが、随所にユーモアを盛り込んだ巧みな話術のためか、飽きることなく、笑い転げているうちに終わってしまった感があります。

舘村先生は30年ほど前に大学で鼻咽腔閉鎖不全の診断・治療に携わり始め、そこで得られた対処法が嚥下障害にも応用できる事を知ったことで、口腔機能障害の治療にも関与することとなったようです。したがって講演内容は、それ以降の口蓋裂や神経筋難病、脳血管障害、認知症などの方々に対して口腔機能(食べる・話す)障害の治療に携わった経験や、得意とする筋電図等の臨床口腔生理学研究等を基に構成した格調高いものと思えました。また、単に「通説」をそのまま受け入れることを良しとせず、明確なエビデンスを追求しようとする研究スタンスにも敬服せざるを得ませんでした。

 

以下、氏の講演のイントロ部分を中心に紹介することとします。

今までの歯科医療では「通院ができて歯科用チェァにも座れ、指示に従える人」を対象に治療を行ってきた。治療すれば咀嚼嚥下機能が回復するケースを主に扱ってきたからです。しかし、現在ではそれだけでは患者のQOLを回復できないケースが増えてきました。例えば、近年では救急救命医療が発達して救命率が向上しましたが、急性期での治療現場では『口から食べること』は最後とされることがほとんどで、口腔機能が元の状態に回復しないまま退院となったケース等がそれです。

また、この講演会は食育講演会と銘打っていますが、「農水省や文科省のいう食育」は「自分で、安全に食べられ、栄養吸収もできる」事が前提となっていて、その条件が欠けると対応が困難となる事を先ずお話ししておきますとの前置きの後、今回はこれらの『経口摂取できない場合』における「歯科の取り組み」についてお話しすることにしますと講演を続けられた。

・・・以下、抜粋したいくつかの項目に簡単なメモを添える形で紹介します。・・・

≪何故に経口摂取が望まれるのか≫では、非経口摂取によるバランスの良い栄養剤による「ふくよかな栄養失調」に注意する必要がある。嚥下リハでは口腔咽頭機能の回復とともに、咽頭機能に応じた食物の調理法が望まれる。一方、経口摂取の難しい理由は呼吸と同じ経路を使うことにある。

≪嚥下障害を疑ったら≫では、VFやVEはゴールドスタンダードか?安全に嚥下検査ができる条件や正常像を知ることが必要。

≪何故、人は誤嚥するのか≫では、馬と違って、人には咽頭がある故。

≪食物摂取機能の発達過程、(初期・中期・後期)≫では、哺乳時、乳児嚥下の特徴、成人との比較により理解度を高める。離乳が可能な条件は首が据わり、原始反射が消えること。離乳初期の食物の要件等に関して理解する事。

≪摂食・咀嚼・嚥下機能、(先行期・準備期・口腔期・咽頭期)≫では・・・・・・

そのほか、ボタン訓練法は効くのか、姿勢と開口量、仰臥位と横隔膜、嚥下補助装置、粘性に左右される至適嚥下量・・等と続きました。詳細を知りたい方には『摂食・嚥下障害のキュアとケア・医歯薬出版・舘村卓 著』が参考になるかと思います。(ページの合間に囲み記事のように配置されている37個のNOTEも面白い。たとえば、N24「お粥にすると上手く嚥下できるかー食事の途中でむせ出すのはなぜか」、N35「なぜ臼歯部から口腔ケアするのか」など。)今回は紙面不足でとても書き込めません。最後に、氏の決め台詞『実践なき理論は無力、理論なき実践は暴力』を紹介して報告を終わりとさせていただきます。