EBM講演会 第1回 八木稔先生




『ウ蝕予防におけるエビデンスとは』
  ・ ・・・・現時点で何がエビデンスとされているか、 歯科医師、歯科衛生士、歯科保健関係者が正しく認識すべきこと・・・・
  講師の八木先生は、学生時代よりウ蝕をはじめとする歯科疾患の『予防法』 とその社会的意味、その個人的意義に関心を持った、その当時としては変り種の一人である。
  大学の予防歯科学教室に入局されてからは、 後に日本の歯科保健をリードすることになる数多くの仲間と共に、 公衆衛生学的な虫歯予防研究に特化し研鑽を積んで今日に至っている。
  公衆衛生学的手法を実際に社会において駆使するには、 行政、団体組織、個人を動かす人間行動力学や経済的側面は言うにおよばず、 社会の評価に耐え、プロとしての責任を伴う『臨床結果』が求められるものと思うが、 講師はその自覚をもって活動を続け、実績を出してきたと評することができる人物である。
  八木先生は憲法25条に掲げられている精神を個人的信念として持つに至り 、どんな人でも等しく恩恵を得ることができる公衆衛生学的視点に立った虫歯予防法を研究 ・実践展開されてきた。
  単に教室に閉じこもって研究するばかりでなく、長期間のフィールドワークを通して得た 『現場感覚』を有している強みもある。
  臨床感覚が欠落しがちな研究者や現実無視のどこかに迎合したコメントを出す輩とは一味違って、 臨床研究と試験管研究をフィードバックさせながら、 EBMがあると確証された事実のみを基に講演を展開するはずである。
  患者さんと相対して、ここまではエビデンスがあると自信を持って指導するためには 八木先生の講演を拝聴するは必須要件かと思う。
  多くの方々のご参加を期待し『呼びかけ文』とするものである。
 
 
  EBMに基づくう蝕予防・講演会
  新潟大学大学院 医歯学総合研究科 助教授 八木稔 
   05年5月15日 
 都ホテル 午前10時から12時 
  50人以上の参加者を集めて開催される
  冒頭から、参加者はちょっと戸惑ったかもしれない。
  いつもの講演会と違って講師の提示するデータや治験などを受け入れるのではなく、 既存のそしてこれから出てくるだろうさまざまな主張・論点に対して、 批判的に吟味し、エビデンスの質を確認してください。その考え方・方法を提案しますというのである。
  以下、講演の要旨も挟んで報告させていただきます。
 
  EBM(Evidence-Based Medicine)はそもそも医療の『方法論』であり、 『行動』そのものだと主張する人もいるくらいで、単に根拠のある結果を示す言葉ではない。
  ただ学問的には臨床疫学がEBMの中心であり、根幹を成す方法論であるから、 疫学的手法を正しく理解し道具の一つとして使いこなす能力を医療関係者には求められている。
  また、EBMは医療人が患者さんに押し付けるものでなく、 より患者さん中心へと意識を転換する行為でもあるという。
  患者さんの処置を決定するものは、今までは教科書の記述や 経験であったり同僚の意見であったりしたものが、EBMでは、適切な形で『根拠』を患者さんに提示し、 患者さんが処置の決定に参加できるようにする行為であるというのである。
  今まで漠然と理解していたものとはかなり違うように感じたのは私ばかりではないと思う。
  EBMの講演会だから、今までにEBMがあると専門家が判断したことを集大成して提示してくれるだろう、 今回はそれを覚えて帰ればいいと思って参加された方には、 なかなか具体例がでてこないのでじれったく思われたかもしれない。
  結果を記憶するのでなく、正しい判断を導き出す方法論を身につける講演会だったのである。
  講演の核心部分であるPECOの方式による論文の読み方は有益だった。
  Patient患者(誰に)
  Exposure(暴露)なにをしたら
  Comparison(対照・Control群)誰と比較して
  Outcome(結果)どんな結果がでたか
  に絞って論文を読めば、その論文のある程度のエビデンス・根拠度が見えてしまうというものである。
 
  氏は講演中、具体例に触れなかったわけではない。
  私の恩師である木次先生の論文をいくつか引用した例がそれである。
  フッ素イオン導入法と普通のフッ素塗布法との効果に差はないとする論文の解釈の仕方、 また4年に渡るフッ素洗口法の前向きコホート研究における『論文の質』の高さは、 『研究における高精度のデザイン』によるものであるなどの具体例は 疫学の基礎を分かり易く解説していたと思う。
  また、講演でも少し触れられたが、氏は4年生の歯科衛生士を養成する 新潟大学歯学部口腔福祉学科における教員の中心的メンバーで、 歯科医師ばかりでなく歯科衛生士も質の高い人材が将来輩出され、 確実に歯科界の流れが変わる方向にあるとお話されていたことが記憶に残る。
  歯科界においてもEBMを正しく使うことが必須となるし、 それに向けた教育プログラムや人材育成が進行しているというのである。
 
  10月22日に予定されている名郷直樹先生の『EBMとは・(仮題)』も含めて、 今後とも保険医協会歯科部会はEBMを継続的に取り上げていく方針であるが、 今回はその第一弾として成功であったと思う。
  会員各位には、次回以降の参加もお待ちいたします。
 










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