歯周疾患と心臓病(医科への提案)




『テーマその2』
  もうひとつのテーマとしては、医科サイドには歯周疾患の特徴を知っていただきたいし、歯科サイドには全身疾患の病態などを知っていただきたいということがあります。できれば、医科歯科供に歯周疾患が全身疾患と関係しているらしいと言う視点で日々の臨床に取り組み、将来的に良い情報をお互いに提供していけるように、そして、歯科と医科が相互に意見交換、治療に有益となる情報交換できるようになれば良いと考えています。その第一段階としては、互いが興味を持ち、その価値を見出す必要があると思います。歯科の私としては、医科の先生方に歯周疾患はこんな特徴を持っていますと言う事をお伝えする事になります。どこまで科学的に確かなものとして解説できるかといえば私には荷が重いのですが、トライしてみます。

  歯は硬組織としては、体内から体外へ交通する人間の体でただ一箇所と言って良い、非常に特異的な存在です。その境界はポケットという溝をなし、体内からの浸出液を満たしています。歯周疾患になると、そのポケットは深くなったり、腫れたりして歯周ポケットと呼ばれる状態になり、深い溝やその周辺には、さまざまな菌が存在します。歯周病菌は嫌性菌ですからおもに溝の深部に生息します。それも複数(非常に多い)の菌がバイオフィルムという形で存在しています。バイオフィルムは白血球などの免疫に関与するシステムに抵抗するバリアーの性格を持っています。

ポケット内は体液性、細胞性免疫機能を持つ歯肉浸出液で少しは、防御されてはいますが、それでも体内というより体外という性格を強く持ちます。つまり、抗生物質などを服用しても、腸管から吸収されて血行を介してポケットに浸出する時には、他の体内の血流が多い組織とは違い、細菌、特にバイオフィルム内の細菌を阻止する為に充分な抗生剤濃度が得られにくいのです。クロールヘキシジン等の含嗽剤はポケットの形態のゆえに、単なるうがいでは薬がポケット深部にまで及ばないし、バイオフィルムのバリアーを打ち破り、粉砕し、バイオフィルム深部にまで浸潤する事が困難と考えられます。

うがいの効果は、口腔粘膜表面や、せいぜいバイオフィルム表面に限られると考えられます。また、患者さん向けのうがい薬は原液が0.36%で、それを数百倍程度に希釈して使用するように指導されていますが、文献的に効果が見られたとされる0.11%使用濃度には程遠く、その利用の仕方では効果のほどは疑問です。それではどう言う方法があるのかというと、歯科医院で施されるイリゲーションならば効果は期待できると思われます。超音波洗浄機と水だけによる器械的ディプラーキングでも有効だし、それに水の代わりに効果的濃度に調整されたクロールヘキシジンを使えばもっと有効だろうと考えられています。 論文による発表が待たれます。

医科の先生からは、〔歯医者さんに行くと馬鹿のひとつ覚えのように、歯磨き歯磨きと言われるのだが、歯周病の原因菌が判明しているのならば、抗生剤で対処すればよい事ではないのか。〕という意見をお聞きすることが多い。機械的除去に頼らざるを得ない、上記のような理由があるのです。また、代表的な歯周病原因菌のP.g菌はポケット内部だけでなく舌背等にも存在するとされています。他人から経口的に移ることも考えられます。

どんなに懸命な歯周病の歯科治療が施されても、原因菌が消え、プラークコントロールを しなくても、再発しなくなったという話を聞いたことはありません。プラークコントロールのレベルが悪くなれば再発することが普通であるがゆえに、継続的な専門医の管理が必要とされています。医科のように(言い過ぎを承知で)抗生剤を投与して病気が治れば一件落着、それで終わりというわけにはならないのです。歯周疾患では、「肺炎が治った」と言うように、治ると言う表現を使いません。安定した期間にあるなどと言う表現になります。原因菌が完全に消えた、自然活動免疫ができたという事はないと考えるからです。それゆえ、予防、治療、再発予防、健康増進と一生関わるために、ヘルスカウンセリング、ポジティブモチベーションなど、さまざまな手段を駆使して定期的リコールを続ける必要が出てくるわけです。 現在のところは。








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