混合診療を考える  そして反対する




2002年11月14日(埼玉協会歯科部会)
混合診療に対する歯科部会の見解
  はじめに
 埼玉県保険医協会・歯科部会は、医療制度改革の中で論議の的の一つとなっている 「混合診療」について討議を行った。
そこでの討議を踏まえ、歯科部会としての一定の見解を述べることとする。
 
問題の所在
 混合診療の定義は、「一連の診療行為の中に保険診療と保険外診療が混在すること」 とされている。
この混合診療は、現在の医療法制においては「禁止」されている。
しかし、現在進められている医療制度改革の中で、混合診療の「容認」を求める意見が、 経済界を中心に出されてきている。
 従来から、混合診療の禁止が原則とされてきたが、例外的に認められているものがある。 それは、1984年健康保険法「改正」時に創設された特定療養費制度と、 歯科領域での「保険給付外の材料使用による自費診療の取り扱い」通知(昭51.11.26保険発115号) による医療行為の二つである。
特に後者については、相次ぐ診療報酬の改悪により、 多くの歯科医師が日常診療に取り入れている。

 問題は、何故、今進められている医療制度改革の中で、 混合診療の容認が求められているのかということである。
 混合診療容認論を押し進めるにあたっての最大の論拠は、 「患者ニーズの多様化」である。
「治療内容、投薬、待ち時間などについて患者の要求は多様化してきており、 そのニーズに応えていくことが重要である。 現状の公的医療保険のままでは、そのニーズに応えていくことができない」 というのがその基本的な論調である。

 「経済財政諮問会議」、「総合規制改革会議」及び経済界主導の混合診療容認論
 現在の医療制度改革は、「構造改革」の一環に位置付けられている。 その牽引役は、内閣府に設けられた「経済財政諮問会議」と「総合規制改革会議」であり、 この両会議が進める「改革」の原理は、「市場化と規制緩和」である。 様々な法律で守られていたものが見直されようとしている。 混合診療「容認」論もこれと軌を一にするものであることには、注意を払う必要がある。
 進行する医療制度改革の中での混合診療容認論は、株式会社参入論と並行して提起されている。 この改革による医療制度のビジョンは明確に示されているわけではないが、 しかし次のようなことはイメージ化されるであろう。 
 現在の公的医療保険制度はその財源を低く押さえながら残し、 その上の部分に民間保険を使った診療を可能とするものでる。
つまり国民・患者は、公的医療保険に入ると同時に、民間保険にも入るということになる。 これには、公的医療保険では対応できない「患者ニーズの多様化」に応えられるとの建前と同時に、 民間保険に入れない人への差別化である。

 しかし、民間保険による診療が行われるようになることは、 単純な「現金給付」に止まらず、医療機関による診療内容が民間保険会社により 監視されるという事態が生じかねない。
アメリカ医療が進めた「マネジドケア」である。
この事態が進めば、医療機関は厚生労働省と民間保険会社(株式会社) の二重の管理下に置かれることになり、裁量権を喪失することになる。
したがって、良い歯科医療はできなくなり、我々歯科部会はこれに賛同することができない。

 厚生労働省の混合診療容認論=「特定療養費制度」拡充路線
 総合規制改革会議を中心とした株式会社参入論に対して、 厚生労働省は反対を表明しているが、その一方で「患者ニーズの多様化」 について承認している。
厚生労働省の「患者ニーズの多様化」への対応策は、特定療養費制度の拡充である。
これは「保険外診療の基礎的部分に限って保険給付する混合診療である」(川渕孝一)。
現在、歯科領域においても「金属床総義歯」などがこの制度として導入されている。
 しかし、この制度を利用するには、医療機関に様々な規制がかけられている。 社会保険事務局への届出、厚生労働大臣が定める「基準」の充足などがあげられる。 この特定療養費制度を拡充しての「患者ニーズの多様化」への対応は、 医療機関に多大な規制をもたらすことになり、 保険外部分(自費診療)にまで厚生労働省の規制が強まることから、 我々歯科部会は賛同できない。

まとめ
 混合診療容認論は、「患者ニーズの多様化」を背景として登場してきている。
その一方でこれまで歯科領域でも、「自費診療」の拡大として期待されてきた傾向にある。
かつての差額徴収時代への羨望や、医療費抑制下での診療報酬改悪、 不合理に充ちた審査・指導への苛立ちを背景として、 混合診療緩和を求める声は大きくなりつつある。
「補綴の保険外への移行」論は、その象徴的な現れである。
 しかし、今日の混合診療容認論の主要な発信源は、 決して歯科医療界や国民・患者からではなく、経済界であることを見過ごしてはならない。
混合診療解禁によってもたらされる医療の内容は、歯科医師の期待をはるかに越えて、 商品化されたものとなり、 さらに歯科医師は民間保険会社と厚生労働省に管理されることが予想される。
医療の商品化は、当然の帰結として歯科医師を「生き残り」 をかけた競争と差別化へと導くであろう。そのような状況下では、 良い歯科医療を行うことなどできるはずもなく、 また、国民・患者もそのようなことを求めているとは思えない。

 埼玉県保険医協会歯科部会は、
@「経済財政諮問会議」、「総合規制改革会議」及び経済界主導の混合診療容認論、
A厚生労働省による「特定療養費制度」拡充に基づく混合診療容認論には、
反対を表明する。

                                                  2002年11月14日 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
歯科混合診療考えるシンポジウムを開催(保団連06年9月21日)
歯科・混合診療シンポに全国から123人が出席しました。
 全国保険医団体連合会は、9月18日に、 第2回「歯科混合診療を考えるシンポジウム」を東京都内で開催しました。
10月から本格的な混合診療である保険外併用療養費制度が実施されるという状況下で、 今後の歯科医療に及ぼす影響や問題点を掘り下げる目的で開かれたもの。
33都道府県から歯科医師76人を含む123人が出席しました。
 住江・保団連会長の開会挨拶、宇佐美歯科代表の主催者挨拶の後、
大沢文雄・「保険で良い歯科医療を」全国連絡会副会長、
王宝禮・松本歯科大学薬理学教授、
竹田・保団連副会長、
田辺功・朝日新聞編集委員
の4名のパネリストが歯科における保険外併用療養費について問題提起しました。

患者の望みは"保険範囲広げて"
 大沢文雄氏は、同会が8月に行った「歯科医療に関する患者アンケート結果」を紹介し、 79.1%の患者が「健康保険の利く範囲を広げて欲しい」と答え、 高齢者ほどその割合は高いと指摘。
歯科技工士でもある大沢氏は、歯科技工士会が保険外併用療養費に前向きであるが、 その背景には、歯科技工士の過酷な労働、技工の海外発注、 保険技工が冷遇されている事情があり、それが保険外併用療養への期待に繋がっていると指摘し、 良質な歯科技工物確保のためにも保険評価を高めることを強調しました。

歯科医学の到達点を保険導入すべき
 王教授は
「保険外併用療養費制度に対する歯科医学会の動向―臨床薬理学者の一考察」 として、昨年日本歯科医学会の12の学会が新検査、 新技術、新薬等、口腔内科的発想の治療の保険導入要求を行っていることを紹介、 また歯周病をはじめ、歯周組織再生、口臭、口腔乾燥症、漂白、 禁煙に対する新技術、新薬剤が開発され臨床応用されているが多くの薬剤が保険適用外であるとし、 現行の歯科の保険給付範囲では、歯科医療の質の向上は望めないとしました。
そして「保険外併用療養の間違った一人歩きによっては、国民皆保険制度が揺るぎ、 わが国の国民の健康が守れないことが危惧される」と警鐘を鳴らしました。

必要な医療はその都度保険に―−運動が重要
 竹田副会長は、
歯科開業医の立場から、4月改定から8月9日の中医協答申までの 保険外併用療養に関する一連の動きと問題点を整理。
その上で
@必要な医療はその都度保険導入する、
A一時的に「評価療養」にするとしても順次、計画的に保険導入する、
B永久に保険導入しない「選定療養」は認めない、
C未確立な技術、審美性のみを目的とするものの保険外併用療養は認めない、
D当面「51年通知」は存続させる
などを内容とする保険外併用療養費に 対する基本姿勢を明らかにし、これに基づいての運動の必要性を強調しました。

背景に、歯科差額、差額ベッドなどの存在
 最後に発言した朝日新聞の田辺氏は、
混合診療は保団連が指摘する通り保険制度の根幹を揺るがすもの。
しかし一方で、歯科差額や差額ベッドの横行、 高度先進医療がほとんど実施されていない中では、 「真剣な患者たち」を納得させられず、それが混合診療拡大に繋がっている背景と指摘。
また医療制限など現行保険医療が国民のニーズを捉えているかの問題もあるとして 保険外併用療養を拡大させないためにも、保険給付の拡充が課題であるとしました。

 パネリストの発言を受けての質疑応答の中では、 医療費の総枠を広げること、医科や患者と協力して運動する必要性の発言とともに、 財源について質問が出されました。
田辺氏はこれに対して、「例えば、戦争しないわが国の軍事費は世界第6位であり、 こうしたところを削るだけでも財源はでてくる」としました。
また田辺氏は、旧大蔵省の主計官が「ダム建設の公共事業費4、 5000億円のうち400億円ほど削ると発表したところ、 翌日に国会議員から抗議電話が何本もかかってきて閉口した。
ところが医療費の方は1兆円削るといっても誰からも文句が言われない」 と発言していたことを紹介し、国や財政担当者を執拗に追及する必要性を指摘しました。

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みんなの歯科ネットワーク
混合診療/Cross the Rubicon (混合診療と民間医療保険)
作者 umasan
2006/12/21 木曜日 19:09:06 JST

                 混合診療/Cross the Rubicon (混合診療と民間医療保険)
増大する医療費を抑制する目的で、 近い将来に国民医療費と医療給付費の乖離分10兆円を民間の 生命保険会社に担わせようとする考えが有ると仄聞する。
また最近では、その根拠を兎も角として10兆という数字が 一人歩きし始めているようにも思える。

そして以前から低医療費政策に依って自由診療に頼らざるをえなかった歯科では (積極的に保険の拡充をする努力を怠って来たことも大きいが)、 混合診療の導入に積極的な意見が数多く聞かれる。
また最近では医科の一部にも混合診療を歓迎する声が有る。 公的負担も抑制出来るし、医療機関の新たなる所得源にもなる、 そして何より患者の選択肢が増えると。

そこで「混合診療の導入−民間生保の参入」に就いて、 ひとりの開業歯科医として述べてみたいと思う。
この最大の問題点は、 所得や健康上の理由から誰でもが民間の医療保険に加入することが出来るわけではなく、 また保険外医療を受けられるか否かに就いても同様であるという事だが、 ここでは敢えて民間保険に加入するものとして述べていく。
又ここで私が言うところの民間保険は、混合診療本格導入後のものであると解釈して頂きたい。

混合診療が本格的に導入されると、 そこへ民間生保が挙って参入する。
国民は、どの会社のどの保険が良いか、「賢い消費者」としてその選択を始める。
各保険会社は、ひとりでも多くの消費者に選んでもらう為、そのニーズは勿論のこと、 わがままをも酌んで、より良き商品、よりお得な商品を開発する。
---------それなら結構なことではないのか?
然し、ここで忘れてはならないのが「企業の執念」である。
彼らの最終目的は「利益・利潤」なのである。
「ひとつの商品」を売る側は、それだけで自分達の生活がかかっているが、 「ひとつの商品」を買う側は、何も自らの生活をかけてまでそれを選んでいる訳ではない。
依って結果は明らかである。
「賢い消費者」を自認してみても、 本来のコストに保険会社の経費や利益が上乗せされるに過ぎない。
また企業の手法で消費者(保険契約者)の為に医療費を削減出来るというのも全くの詭弁で、 それは必要な医療が受けられなくなる事を意味しかねない。
医療や介護といった自由競争に適わない分野まで市場化してしまうことが何をもたらすか。

次に我々歯科医療提供者の側から見ると、 民間保険は最初、自由診療を中心とした新規需要の開拓を期待させるものとして登場する。
然しこれは単なる足掛かりであって、民間保険が普及するにつれ、 本来公的保険が担うべきところのものまで侵食されてしまう。
また査定、支払い拒否や値下げ要求も生じてくると考えるのが妥当で、 即ち我々は患者の為に互いに競争するのではなく、 保険会社の為に競争させられることになるかも知れないのである。

また歯科のような軽費医療にて十分に機能するのであれば、 必ずそれはより重医療へと移行する。
そして本来必要であったところのものまで受診抑制が生じてしまう。
結局多くの国民にとって「選択的な支出」として認識される歯科は、 自動車保険のファミリーバイク特約のような扱いになってしまうかも知れない。
混合診療の大幅な導入を認め、Cross the Rubicon、 人柱を立ててまでルビコン川を渡ったのはいいが、対岸で待っていたのは、 ダークスーツに身を包んだ保険会社の審査員だけだった、と言う話にならないように。
再度勘考の必要ありと認むるのは、私だけではなかろうと思うが。

                                                by Zep-W










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