財原論   これからの医療に




保団連夏季セミナー・シンポジュウム
『これからの医療、どうなる、どうする』
今までに何度かこのようなシンポを聞いたが、最高レベルの内容と思えた。 面白くまた解りやすかった。
録音を聞くことをお勧めいたします。

最初は大阪大学の教授・堤修三教授。
彼は介護保険の設立に5年間間かかわった元厚生省の官僚とか。 昭和50年以降、社会保障(医療費など)の予算制約の大きな方針が『シーリング』として 確固たる基盤となっている。小泉内閣時代の遺産となった2006年骨太方針が踏襲され、 過去の5年間と同じく、これからの5年間に1,6兆円(国庫負担1、1兆円) の社会保障費が抑制されることが決まった。
毎年自然増で7700億円が増えることが予想されるが、 このうち(1,1兆÷5)=2200億円を毎年減額する必要に迫られる省は、 この2200億円部分を減らすためにいろいろと診療報酬の中身(制度) を変えたりすると元官僚の立場で解説した。
2006年の医療制度改革の現実と題したテーマでは、 医療費適正化の非論理性へ疑問が投げかけられ、 都道府県を中心とした医療保険一元化の一歩として介護保険や 後期高齢者医療の保険者が広域連合に再編されようとしているが、 すべてにおいて完全な一元化ができるとは思えない。
また、後期高齢者医療制度そのものに関しては、この制度は10年は持たないと切り捨てた。
75歳以上の本人負担が1割、公費負担が5割、保険者の支援金が4割の財源構成では、 将来の引き上げが困難で、結局強烈な医療費の抑制が不可避となる。
すると十分なレベルの医療を受けることができなくなり、 75歳以上の患者の何割かは姥捨て山に置き去りされたも同じとなると予想されるというのだ。
(先日、歯科医師会に行って父の保険を歯科医国保に変えようとしたら、 雑談になった。事務局の人が言うには、後期高齢者の制度は実際の運用で困ることが生じている。 75歳以上でも歯科医師会の会員で仕事もしているのに、 歯科医師国保から脱会しなければならなくなる。 籍だけでも歯科医師国保においておかないと従業員も脱会せざるを得なってしまう。 困ったものだ。)
医師会でも同じだろうが、会社などの事業主は負担が楽になるだろが、 今まで属していた団体から突然切り捨てられるというのもおかしなことだ。

二番手は、日本経済新聞論説委員の渡辺俊介氏。
彼は一貫して国民医療費は国民所得の10%を確保する必要があると主張しているとか。
日本は現在7,3%で先進国中の17、18番手。
その財源をどこに求めるかといえば、日医は一般会計はとても無理だろうから、 特別会計の200兆の中から捻出すべきと主張しているが、 消費税の引き上げしかないだろう。
それとても900兆とかいう国の借金に使うべきとの声はあっても医療に使うべきとの声が 国民から挙がってこない。
世論は診療報酬を上げる必要があるとは思っていない。
医療の現場が大変になっているという認識にない。
日経の若手記者の中でもその認識は薄い。
彼自身は来年も2200億円の医療費を削減し、 それが毎年続くとなれば病院はますます潰れるし、 地方の医療は崩壊することは目に見えているとの認識にあるが、 如何せん、国民との意識のギャップはあまりに大きい。
国民の多くは今でも医者は金持ちで威張っているなどのイメージを持ち、 医療を取り巻く環境が悪すぎるという。 マスコミの医療たたきにも原因の一端はあると反省するが。
歯科の現状にも触れた。
歯科は悲惨の一言に尽きる。歯科医は需給問題を口にするが、 それは国民からは身勝手と映るし、初診料を医科並みに上げて欲しいといっても、 その明確な理由が見えてこない。 歯科の現場の声を反映する方法をきちんと国民に訴えるべきで、 今はまったく国民からも中医協からも相手にされていない。
もっと騒ぎなさい。

三番手は津田光夫・保団連副会長
4度目のマイナス改定はなんとしても阻止したいということが医療界共通の要求だ!
医療費の総枠の拡大なしに今日の危機を解決する方法はない!
 理念・財源は保団連の保険再建プランからの主張となった。
国の責務(憲法25条)と未曾有の景気に沸く大企業の社会的責任を訴えた。
これに関してはいろいろ関係する冊子などがあるので、それお読みください。
四番手は 宇佐美 宏(歯科)保団連副会長。

歯科は今まで、医科以上に徹底的な医療費抑制策がとられた。
補綴などの不採算部門の恒常化し、自費診療なしには経営が成り立たない状況。
補綴管理やいろいろな指導料により、 長期で非常な安上がりの維持を強いるシステムで縛られてしまった。
また、20年も30年も診療報酬が上がらない診療項目が多く、 前回の改定では公称以上の大きなマイナス改定となっている。
これでは歯科医院の経営が困難なだけでなく歯科医療の供給体制そのものが確保できない (歯科衛生士が確保できない。 技工士・衛生士の専門学校の定員割れなど)などの理由を具体的に数字・グラフで示した。
打開策は『より良く食べるは よりよく生きる』の冊子などを活用し、 出前出張でも何でもして、 国民に歯科の重要性と現状を訴える国民的運動を展開する覚悟である。
また、渡辺氏がいみじくも述べたように、 前提となる当初16兆円の目標額が景気回復により7兆円も税収が増えたのだから、 毎年のシーリング額の1、6兆(1,1兆)を見直す必要があるのは必然であるとの根拠を訴え、 また前回06年の改定では歯科はよそうより大幅に改悪されたのだから、 その分も上乗せするように運動すると声を荒げた。

五番手は日野秀逸・東北大学大学院教授。
医療の社会的特徴をまず述べた。
医療は社会にとって、人間にとって生きるうえで必要な最低項目のひとつ・ 必要経費であるとの主張は、 『何故に医療だけは、建設業や農林水産業と違い特別扱いされる存在なのか』が不明瞭で、 個人的にもやもやしていた長年の謎が、日野先生のお話で解き明かされたようですっきりした。
内容は、保団連発行の冊子などに詳しいが、 一部を紹介すると・・・・大企業のが勝ち組であることは明らかで、 応能負担の原則から言ってもどこが税を負担すべきかは言うまでもない。
ルールある資本主義なら、諸外国のGDP比から見ても現在の32兆円の医療費が 42兆円になってもまだ多すぎるとはいえないくらいで、 日本の大企業はもっと法人税を払うべきだ。
年次改革要望書をそのまま受け入れて、 アメリカ金融資本などの要求に迎合するのはいい加減にして、 社会保険庁がその『手引き』にきちんと書いてあるように、 社会保険の特徴は
@勤労国民の相互扶助を目的とし
A従業員の福祉をはかり
B国が責任を持って運営し
C法律で加入を義務づけ、
D所得に応じて保険料を負担し、必要に応じて給付を受ける
・・・・という原則をきちんと守るべきであると主張された。

津田光夫副会長はわが意を得たりとばかりに、 最後に、・・・・だから医療費の総枠拡大は可能であると締めくくった。
平田米里










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