医療崩壊 医師数不足 医学部定員増加へ




「医学部定員を最大1.5倍に」と委員が提言
2008年08月25日  
      「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化検討会◆Vol.7
「医学部定員を最大1.5倍に」と委員が提言
座長・高久氏は反対、27日の中間取りまとめへの反映は微妙か 
橋本佳子(m3.com編集長)
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     8月24日に開催された「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会の第6回会議で、 「医学部定員をピーク時には、現状の1.5倍とする」という提言を盛り込んだ、 報告書骨子(案)が委員から提出された。
 この報告書骨子(案)では、「厚生労働省の医師の需給推計は、 現場の実態から乖離した荒唐無稽なデータ」と手厳しく批判した上で、 「今の長時間労働の是正と医療の安全性の向上、増加する医療ニーズへの対応などのためには、 可能な限り速やかに、少なくても現在の定員の50%程度増員し、 その後、医療需要の動向に合わせて養成数を適切に調整する」としている。
 増員方法としては、2009年度から毎年400人ずつ医学部定員を増やし、 10年後の2018年度には、現在の約8000人よりも4000人増(約1万2000人)にする。 その後、2024年度まではこの定員数を維持し、その後、また定員を減らすという提案をしている。
わが国の人口1000人当たりの医師数は現在2.0人だが、この定員増により、2017年度には2.4人 現在の英国、英国並み)、2028年度には3.0人(現在のOECD諸国の平均) をようやく達成できると試算している。

 もっとも、座長の日本医学会会長(自治医科大学学長)の高久史麿氏は、この定員増に反対。「
過去最大まで医学部定員を増やすことに対しても、相当の抵抗がある。 50%増という方針を打ち出したら、さらに抵抗が強まり、 過去最大も実現できないのではないか。
開業医が多いといった現在の医療提供体制を見直せば、今の勤務医の状況は変わる。 医師数を増やすのは簡単だが、減らすのは大変であり、この辺りは慎重に議論すべきではないか」 (高久氏)。

 舛添要一・厚生労働大臣は、「6月末の政府の『骨太の方針』で『 過去最大の定員まで増員する』としたのは、 まず来年度予算でそれを実現して医学部定員増に弾みを付けるのが狙いだった」と述べた。
その上で、「福田総理には、『歯科医と同じになったら、どうするんだ』と言われた。
財源が潤沢にあれば問題ないが、医療分野以外でも様々な予算要求がある。 その中で『結果』をきちんと残すことが重要」とし、まずは「過去最大」 の定員増の達成が重要であるとし、「50%増」の数字の是非には言及しなかった。 

 この報告書骨子(案)は、座長も含め計11人の委員のうち6人と、 3人の参考人の連名による。
次回の8月27日の会議で行う、中間取りまとめについて、 高久氏は、「この骨子(案)とこれまでの意見を踏まえて行う」としている。

厚労省の試算は「荒唐無稽」、大臣が再試算を指示
 「荒唐無稽なデータ」と批判されたのは、前日23日の 「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会の第5回会議に提出されたデータ。
これは、厚生労働科学研究である「日本の医師需給の実証的調査研究」 (2006年報告)を基にした厚労省の試算だ。
同研究は、日本の医師需給をめぐる議論のたたき台になっている。
 厚労省提出資料では、現状の勤務時間と同様に「週48時間勤務」とした場合、 現状の医学部定員でも2022年に需給が均衡するとしている。 また「週44時間勤務」に減らし、かつ「過去最大」まで定員を増やした場合には 2027年に均衡するといった試算だ。
一見すると、「医学部定員を最大1.5倍」という増員は必要ないという試算に映る。

 報告書骨子(案)では、「医療需要を患者のニーズではなく、 医師の勤務時間で表現しているが、週平均70.6時間のうち、自己研修や研究などを除いて、 (現状の勤務時間を)週平均48時間としており、 現場の実態から乖離したデータである」と問題視している。
女性医師の増加などの医師側の要因と、 医療ニーズなどの需要側の要因を加味して試算し直すべきという批判が続出した(文末参照)。

 これらの議論を収拾するため、舛添大臣は、「医師の需給の問題は、 データを構築することで半分は解決する。様々なパラメーターを加味したら、 どんな試算になるのか、統計学に詳しい人材を交えて試算してほしい」と、厚労省担当者に指示した。
 この日の議論は、医師需給について議論されるたびに繰り返されてきた内容とも言える。
舛添大臣が再試算を指示したことは、こうした議論に終止符を打ち、 次なるステップに議論が進む点で大きな前進だ。
 「今は、誰も医師需給について予測ができない状況。 27日の中間取りまとめでは『医学部定員を50%増』としておき、 データが出たらまた見直すという形でいいのではないか」(山形大学医学部長の嘉山孝正氏)。

【日本の医師需給の実証的調査研究】に対する批判(
「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会の第6回会議資料による)

●時間に着目した医師需給見通しでは不十分であり、 現状は「3時間待ちの3分診療」といったことで医師不足をカバーしている。
患者に満足してもらうために、十分説明をするなどによって、診療時間を長くするならば、 それによっても医師数の需給も変わってくる(岡井崇・昭和大学産婦人科教授)

●女性医師の就業率を改善するためには、女性医師自身が育児期間に入ると、 女性医師の労働時間が減ることになるので、今後、女性医師が増える状況下では 、需要の見通しについては、その状況を勘案して推計する必要がある(岡井崇・昭和大学産婦人科教授)

●提出資料は、実際の現状と異なる感が否めない。医師の労働も偏在している。
産科に1回当直すると24時間拘束、勤務しないときはテレビを見ていても、 オンコールのとたんに勤務することになり、気が休めない状況が続く。
産科が労働時間を守り、いいサービスを提供するためには、圧倒的に数が足りない (川越厚・ホームケアクリニック川越院長)

●土屋委員が提出した第2回会議資料に年代別医師数の資料が示されているが、 44歳以下の若い医師が、小児科や救急医療などの非常に苦しい病院の現場を支えている。
一方、地域医療は、病院現場を離れた高齢医師が担っているとの現状がある。
そこで、このような現状を踏まえて養成数を増やす必要があり、 特に24時間救急、急性期医療等にどのくらいの人員を割く 必要があるのかを考える視点が必要(海野信也・北里大学産婦人科教授)

●国立がんセンター中央病院においては、常勤医師130人、非常勤医師130人体制であり 、事務局提出資料(医師の需給バランスや医師の労働時間に関する資料)では、 この非常勤医師の実態が反映されておらず、実態を表していない。
長谷川データは、アンケート調査なので、おざなりな回答になっている感がある (国立がんセンター中央病院院長の土屋了介氏)

●長谷川データの業務時間に待機時間が含まれていないこともおかしい。 産婦人科医はオンコールが月563時間というデータがある。
業務時間で見ても月303時間である(海野信也・北里大学産婦人科教授)

●女性医師が出産すると、医師としての労働力は相当減る。
供給体制としては、女性医師が当直のない診療科目を選択するなど、 質が変化することになるので、現場では、労働力としては、 女性医師1人を0.5人程度にカウントせざるを得ない(岡井崇・昭和大学産婦人科教授)

●女性医師の夫は医師であることも多く、 過剰な勤務なのは男性医師も同様なので、女性医師だけの問題ではない (この点も勘案して試算すべき)(大熊由紀子・国際医療福祉大学大学院教授)

●医師の労働時間についてはタイムスタディーをやるべきで、 調査に当たっては、現場をよく分かっている人がプランニングする必要がある。
その際、紙を配布するだけではなく、医師について回り、 現場を見て調査すべき(嘉山孝正・山形大学医学部長)

●医師の正確な勤務状態を把握するために、医師へのアンケートでなく、 タイムスタディーをやるべき(川越厚・ホームケアクリニック川越院長)










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