歯科学と医科の境界領域疾患(私見)




(A) 先ず始めに、
歯科医の歯科疾患に対する基本的な捉え方を述べると、医科と大きく異なるとは思えないが、それなりの特徴があるようだ。 口腔内の特徴の一つは歯の存在である。この硬組織は生体内から外部へ突き出し、その境界は弱々しい組織で区切られている。歯頚部のエナメル質に細胞性の付着をしている歯肉内縁上皮との接触面がその場所である。そして、発生学的にはエナメル質は外胚葉性の上皮に由来するもので、体の外と内は発生学的に理屈どおり上皮で遮断されている。大雑把に言うと、細菌がこの境界を越えて体内に侵入したときに歯科特有(医科でも同じか?)の疾病が発生する。エナメル質という上皮を破った時は虫歯になり、歯肉内縁上皮を破った時は歯槽膿漏ということになる。外胚葉組織が保全されている時は問題が生じないが、間葉系組織に細菌侵襲が及んだ時に発症するといったほうがよいのかもしれない。

(B)『生体の敵』と『口腔を守る唾液と歯肉溝浸出液』
口腔はOral cavityと表現されているように器の形をしているが、歯科を特徴づけるもう一つの要素である唾液がこの器を浸している。口腔を消化器官とみなすときは、唾液を単なる消化液と捕らえがちだが、実際はその他多くの機能を持って口腔内全域をカバーしている。そして、また一つの特徴である歯肉溝浸出液は、狭い部分でだが大事な外界との境界を守る役目を果している。疾病を引き起こす生体口腔にとっての敵は、主に『細菌』に代表される微生物である。その敵に相対する主な味方は、歯肉浸出液中の『免疫』と『唾液』である。そして厄介なことに、歯肉縁上プラ−クの主な栄養源は唾液で、歯肉縁下プラークの主な栄養源は歯肉浸出液なのである。人の食べる食事を栄養にする細菌は、蔗糖などを栄養源にするミュータンス菌などの少数派である。全体としては、敵から生体を守るものそれ自身が、敵の栄養にもなっているという複雑な関係でもある。

(b−1):『味方その1−唾液』
唾液は大唾液腺(耳下腺、舌下、顎下腺)があり,上下左右の4本の管から口腔内に注ぎ込まれている。そのほかには、小唾液腺が口腔粘膜に数多く点在し、大小各唾液腺はそれぞれ成分に変化を持たせて、その時々でバランスよく役割を担って分泌されている。数多くの役割が論じられているが、分泌型免疫グロブリンIgAの産生がまず思い浮かべられる。非免疫性の抗菌物質としては、カンジダ アルビカンスの増殖阻害因子、Pg菌の抗菌作用としてのヒスタチンの産生、シスタチン産生、そのほか抗菌作用のラクトフェリンの産生がある。消化酵素の産生では、アミラーゼの消化機能、胃底部にあるペプシンと似た舌リパーゼ等がある。

(b−1−@):ヘルスプロモーション
数多くの産生物質があるが、その存在意義について、もっともっと詳細な検討が加えられる必要があると思われる。消化器内科との連携も視野に入れたい。 歯科で最も注目されている働きは、虫歯予防に働く唾液の緩衝能と再石灰化機能と「汚れ」を洗い流す自浄作用だろうか。ヘルスプロモーションの立場では、疾患になるのを待つ必要はない。積極的に健康増進対策を講じることがこれからの社会に求められていることは明白で、予防中心に歯科診療を展開して地域に受け入れられている歯科医院が増加している現状がそれを証明している。また、このヘルスプロモーション領域に医科歯科境界領域としての取り組みが生じる可能性が高いと考えられる。更に予防重視の診療がもっと大きく発展して、細菌や唾液の組成や量などを分析することで、総合的に評価し、対策を立てる専門領域、専門職が生まれる可能性があると思う。歯科ばかりでなく、耳鼻科咽喉科、呼吸器内科なども関係するだろう。また、唾液の分泌を抑制する薬を服用しているか否かは歯科医師にとっては大きな問題で、関連領域の各科との連携が欠くべからざることになる。口腔乾燥症、摂食障害、虫歯の発生等と密接な関連があるからである。

(b−1−A):唾液とフッ素
すこし余談になるかもしれませんが、虫歯の予防におけるフッ素との関係は以下のように考えるとわかりやすいと思う。 唾液の虫歯予防能力を強化するものというイメージがフッ素のうがい(洗口)で、エナメル質を直接コーティング強化するというイメージがフッ素の塗布で、上水道のフッ素化は歯を丈夫にする食べ物を強化するというイメージである。 唾液成分のカルシウムなどの代りにフッ素が取り込まれると、もっと硬いエナメル質になると言うことで、今ではこのフッ素、世界中に認知され、どんどん普及している。

(b−1−B):唾液と再石灰化
虫歯の発生予防において、唾液は重要な役目を担っている。 簡単にまとめると、唾液は液体のエナメル質と称されるくらい唾液中の特殊なたんぱく質のおかげで、過飽和状態のエナメル質の無機成分を含んでいる。そして、虫歯菌が食事などにより取り込まれた、蔗糖、グルコースなどを原料に酸を産生しても、唾液はもう一つの重要な成分である重炭酸塩の緩衝能で中和し、多量に分泌されることで洗い流し、そして過飽和状態で含まれる無機質により再石灰化を促す。勿論、重炭酸塩が食べ物の酸を消し去るほど強力で即効性があるものではないし、限度を超えた脱灰は修復不可能である。 口呼吸者や口腔乾燥者は歯の表面に唾液のバリアーが及びにくいので、虫歯のリスクが高まることになる。また、甘いものは唾液の分泌を促進するからといって、口腔乾燥の人に食事の前に飴玉を与えれば食事がしやすくするなどの発想は、歯のある人にはリスクが高い。火に油を注ぐことになりかねない。

(b−1−C):唾液は誰が担当するのか
すると、この口腔内に常在する菌や真菌と唾液との関係をうまく処理できる人なら、 歯科医である必要はないといえる。歯科医の主な業務は、早期発見、早期治療の第二次予防と機能回復、リハビリテーションの第三次予防である欠損補綴ということは間違いないが、虫歯予防や口腔ケアは歯科医である必要がないと言えるかもしれない。 他分野の職種が関与できる領域と言えるかもしれない。また一方、これらを専門にする歯科医の『専門医』というジャンルも出現してよいとも言える。

(b−2):『味方その2−歯肉浸出液』
歯は硬組織としては、体内から体外へ交通する人間の体でただ一カ所と言ってよい、非常に特異的な存在である。その境界は歯肉ポケットという溝をなし、体内から大事な境界を守るために歯肉溝浸出液で満たされている。勿論、口蓋扁桃や顎下リンパ節などの多くのリンパ系の組織が口腔周囲に存在しているが、ここでは歯周病菌と直に接しているポケットの中の免疫について焦点をしぼりたいと思う。歯肉浸出液には白血球が数多く見られ、その80%以上が食菌能や殺菌能を有し、底から溢れ出るように唾液へ移行していく。抗体産生細胞はIgA産生細胞が最も多い。また、インターロイキン(IL−1、−2、−6)等のサイトカインや腫瘍壊死因子(TNF)なども存在する。白血球の多くは好中球でマクロファージなどもいるが、免疫グロブリンや補体と共にポケット内の細菌叢をある程度コントロールしていると考えられている。細胞性免疫と液性免疫ということである。 しかし敵も然る者、例えば、Treponema denticola はP. gingivalis以上に歯周ポケットに増加しているのに、Pg菌と異なり、特異抗体の上昇を感知できない。T. denticolaは 免疫応答を抑制し免疫反応を起こさせないようにしている。マクロファージの抗原認識能力を障害させているのである。重要な事は、この免疫抑制因子は、他の歯周病菌に対する免疫応答も押さえてしまうため、他の菌種群もますます増加し炎症を悪化させる。すると、炎症の悪化により、この菌の栄養源である歯肉溝浸出液が増加し、ますます棲みやすくなると言う悪循環を引き起こすことになる。ちなみに、上記の2種類と、Bacteroides forsythusは成人性の歯周炎の進行期(活動期)に特徴的に多く見られる。
(参考資料)奥田克爾著『デンタルプラーク細菌』第2版、医歯薬出版

(b−2−@):医科の先生に 
歯周疾患の特徴を医科向けに若干解説すると以下のようになる。
歯周疾患になると、ポケットは深くなったり、腫れたりして歯周ポケットと呼ばれる深い溝が歯と歯肉との隙間に形成され、深い溝やその周辺には、原因であるさまざまな菌が繁殖する。歯周病菌は嫌性菌だから、おもに溝の深部に生息する。それも非常に多い菌がバイオフィルムという「痰」のような形で存在している。バイオフィルムはまた、免疫に関与するシステムに抵抗するバリアーの性格を持っている。ポケット内は体液性、細胞性免疫機能を持つ歯肉浸出液で少しは防御されてはいるが、それでも体内というより体外という性格を強く持つ。つまり、抗生物質などを服用しても、腸管から吸収されて血行を介してポケットに浸出する時には、他の体内の血流が多い組織とは違い、細菌、特にバイオフィルム内の細菌を阻止するために充分な抗生剤濃度が得られにくいのである。 クロールヘキシジン等の含嗽剤はポケットの形態のゆえに、単なるうがい行為では薬がポケット深部にまで及ばないし、バイオフィルムのバリアーを打ち破り、粉砕し、バイオフィルム深部にまで浸潤する事が困難と考えられる。それではどういう方法があるのかというと、歯科医院で施される超音波振動によるイリゲーションならば効果は期待できると思われる。超音波洗浄機と水だけによる器械的ディプラーキングでも有効だが、それに水の代わりに効果的濃度に調整されたクロールヘキシジンを使えばもっと有効だろうと考えられている。キチンとした研究による発表が待たれる。 医科の先生からは、〔歯医者さんに行くと馬鹿のひとつ覚えのように、歯磨き歯磨きと言われるのだが、歯周病の原因菌が判明しているのならば、抗生剤で対処すればよい事ではないのか。〕という意見をお聞きすることが多いが、機械的除去に頼らざるを得ない上記のような理由があるのである。また、たとえ局所薬物配送システム(local drug delivery system:LDDS)等を用いて、歯周病菌を死滅させることに成功したとしても、骨と接合していない露出セメント質にへばりついている菌は死んでも容易に脱落しないし、更にはセメント質に付着した内毒素を残したままでは予後不良である。機械的に取り除く必要がある。たとえ、きれいなったとしても歯周病菌の戻りは起きる。プラークコントロールのレベルが悪くなれば再発することが普通であるがゆえに、継続的な専門医の管理が必要とされているのである。

(C)その他の視点
上記(敵―味方、体内体外)の視点のほかに、歯周疾患のように、細菌と免疫の局地的反応が口腔組織にとどまらず、その長い慢性的炎症の性格ゆえに.全身的影響を及ぼすという考えがペリオドンタルメディシンという新しい分野に展開してきた。ここは境界領域の宝庫と言ってよいだろう。(参考資料、石川県保険医協会出版のペリオドンタルメディシンという小冊子があります。この本を読まないと話が見えてこないかもしれません。)

(c−1)先ず、歯周病原因菌が直接、心臓や動脈に伝播し歯周病と同じような炎症反応を起こすのではないかという説。
アメリカでの数々の疫学調査から、高度の歯周疾患を有する人は健常者と比較して、明らかな有意の差を持って発症リスクが高いと報告されている。 多分それは正しいのだろうが、本当に、口腔内由来の代表的歯周病菌のPg菌が心臓血管系に伝播し、そこで増殖し、重篤な症状を引き起こすのかというと、いろいろな条件がクリアされないと確証されたと言えない段階かもしれない。たとえば、
(@)心臓血管系にPg菌が発見されたとして、果たしてその菌は歯周炎由来のものといえるのか。その証明はされているのか。
(A)Pg菌はどのようなメカニズムで、伝播し、心臓血管系に付着し、増殖するのか。Pg菌にその性質があるのか。これはエビデンスが整ってきたようだ。  
(B)心臓疾患に関与する口腔由来の菌は、Pg菌だけなのか
(C)免疫機能、遺伝的違いは? さまざまな証明されるべき事項、今後検討されるべき多くの事項があると思われる。

(c−2)呼吸器疾患との関係では、歯周病原因菌が肺に落ち込むことが誘引となり肺炎原因菌感作をしやすくするという説が提唱されている。しかし、日本における高い精度を持った老人施設を対象とした大規模な調査では、歯のあるなしによる有意の差はなかったと報告されている。歯科サイドからは、医科の清拭程度の口腔ケアでは効果がなくて、ブラシなどによる、歯の周囲、特にポケット周囲の徹底的な清掃が必要だと指摘されているのであるが、途中はともかく、最後の唾液に混ざる細菌や舌背後方に付着する細菌だけが問題になるのだろうか。更なる医科歯科の共同研究が待たれるところである。

(c−3)早産との関係では、菌そのものが伝播するということでなく、歯周疾患の激しい部位ではプロスタグランジンEUが多量に産生され、それが血行を介して子宮筋の収縮を促すことで、早産にいたるのではないかという説が唱えられている。 2年程前に、女性週刊誌はいち早くこれを取り上げ読者の興味をそそったようだが、肝心の歯科医は何のことかわからず、また、知っていたとしてもどこまでエビデンスがあるのか判らず戸惑った。

(c−4)糖尿病との関係では、これも菌の直接関与ではなく、歯周疾患部位に産生されるメディエターが関与するという説で、どうもエビデンスが確立されつつあるようだ。 歯科の臨床現場では、糖尿病コントロール状況がどのレベルにあるのかを考慮して治療が進められている。実際、HbA1cの変化を気にしないで治療することは少ないと思う。

(D)口腔ケアと介護に関連して
口腔ケアは広い意味では、介護と看護に治療をくわえたものとされている。しかし、通常は、歯科治療を除いた、狭い意味で使われている。口腔ケアは一般に、口腔の疾病予防、健康保持.増進、リハビリにより QOLの向上を目指すものであり、 決して要介護者などを対象にする分野だけを指すものではない。しかし一般的には、要介護者の方の実態に沿うように改良され、 応用が施されてきた部分を特別に口腔ケアと指す事が多いようだ。そして、単に口腔清掃ばかりでなく、摂食嚥下機能の回復治療などは耳鼻咽喉科、言語聴覚士、歯科医師などのより取り組みが始まり、少しずつ成果が現れてきている。 口腔清掃の対象疾患は、エビデンスを持って語れるものが少ない現状だが、代表的なものは誤嚥性肺炎である。それに対する一般的な論調は、起炎菌の多くは口腔常在菌であるといわれていて、適切な口腔ケアを実施すれば発熱や肺炎の発生予防が可能だとするものである。

私はまず大前提から疑問に思っている。 肺炎などの起炎菌ではなく感作しやすくするのが口腔内の常在菌とする説が正しいと思う。この分野の研究では、米山武義氏と徳島大学の歯学部口腔細菌学教室の協力による5ヶ月に渡る研究が有名で、内容は歯科衛生士が毎日1回機械的清掃、他は本人による口腔清掃。介護主任が歯科衛生士の資格を有し、18年臨床経験を積んでいたことが特徴で、高い口腔ケアのレベルを達成することができたという。どこでもできる方法ではない。つまり普遍性にかける方法だと思う。 また、咽頭部の細菌数を測定し、それが十分の一になったという。10の7剰が10の6剰単位になった事をいかに評価するかだが、咽頭部の細菌数と口腔の細菌数の相関が不明である。また、どのレベルになれば、どの程度臨床的に効果が生じるのか不明。 この研究を発展させ、今度は、総数ではなく、ブドウ球菌、緑膿菌、カンジダ、黒色コロニーで調査したという。確かに、4分類とも、検出率では口腔ケアをすると減少したようです。検出したことと量とは違うと思うのだが、ゼロになったことはかなりの評価の対象になると思う。しかし、300種とも言われている口腔細菌のごく一部である。 調査者本人も認めているように、この結果だけで肺炎の感染に結びつくとは結論できない。 更に研究は続く。(この研究自体は大変、尊敬している。)

今度は、東北大学の医学部老人科呼吸内科の佐々木英忠教授の指導で全国11カ所の特養で366人を対象に口腔ケアと肺炎の関係を調べたという。 施設の介護者が毎日の口腔ケアを実施し、歯科医師、歯科衛生士が週1から2回、専門的清掃を実施。7日以上の発熱 15%対29%(対照群)。 肺炎15%対19%(対照群) 肺炎による死亡 7% 対16%(対照群)。効果はあったようだ。しかし、無歯顎者と有歯顎者との比較では、有意の差はなしとされた。つまり、歯周病の原因菌との関係を関連づけることはできなかったという。(個人的には口腔内常在菌、その中でも歯周病菌が関与する可能性が高いと思っているので、有意な差があって欲しかった。また、医科の呼吸器専門家は全く違う考えをもっていることも知っている。肺炎の原因菌は原因菌として確定されていて、口腔内の菌はたまたまそこに居ただけという考えのようだ。) 私が問題にするのは、口腔ケアの実施者は誰か、一日何回の実施か、一回に要したケアの時間は何分か、そして、どのレベルの対象者に実施したのか等が不明なことが、ほかの研究との比較に困難を生み、積極的普及に曖昧さを残すのではないかと危惧するのです。どの程度の口腔ケアがされるべきなのかを明確にする必要がある。それも、歯科衛生士などが特別無理なく、特別の機器を用いなくてもできる、比較的容易な長期継続できる方法であることが望ましいと思っている。この辺りは、医科歯科共同研究のターゲットとして、非常に興味を引かれる領域である。

(E) 口臭に関して
宮崎秀夫(新潟大学大学院医歯学総合研究科 口腔健康科学講座)教授らの指導啓蒙で、全国的に広がりつつある治療領域である。(「臨床家のための口臭治療のガイドライン」クインテッセンス出版もご紹介しておくことにする。)
 石川協会主催での講演から、要点を記すと以下のようになる。心因性の口臭患者のケアは単純ではないが、診断手順を誤らなければ決して怖くはなく、また実際に匂いがある真性口臭症患者は、通常行う歯科治療と口腔清掃でほとんど100% 治癒する。 口臭がある真性口臭症の原因で最も多いのは歯周病である。一方で、歯周病原細菌を含む嫌気性菌が産生する口臭ガスは,歯周組織破壊を促進させることが明らかとなった。歯周病性の口臭成分は,舌苔由来の生理的口臭成分と配合が異なり,メチルメルカプタン濃度が高いことがわかっている。そうであれば,口腔からの生体ガス(口臭)をバイオマーカーとして,歯周病の診断,治療予後の判定,あるいは,定期健診(メインテナンス)での歯周病スクリーニングのための臨床検査に有用であるかもしれない。 宮崎先生のデータの示すところでは、国民の70%は口臭について気にすることがあり、10%は実際、口臭が気になるという。国民の関心は高いようだ。一方差し迫った問題は、それに対応すべき歯科サイドが、数多くの潜在的患者さんに充分対応できていないことのようだ。特別な理論や操作が複雑な機器を振り回す必要はなく、ある程度の準備をすれば、即臨床に取り入れられるもので、今後急速に広まるものと予測される。加えて、検査法から始まって、診断、治療法に至る道が、ほぼ確立しているので、治療に専念すればよいという安心感がある。歯科が一歩リードした感があるが、耳鼻咽喉科や内科などにも大いに関連する要素が含まれている。疾患特有のガスを検出することで診断が可能だからである。

(E)舌苔
私の不確かな記憶によれば、幼少時の医科検診の時に、胸をとんとんされて、喉を覗かれ、ベロも診られたような気がする。今は誰が見るのでしょうか?
石川県保険医協会主催の柿木保明(国立療養所南福岡病院歯科)先生の講演をお聞きした時に、歯科も舌を診る目が大切だと教えられた。菌交代現象は菌との関連で今回のテーマの唾液などに関係するが、そればかりではなく、全身の状態を表す一つの臓器としての見方が提唱されている。(詳しくは、舌診入門という日本歯科評論の別冊に詳しく論じられている。ご一読ください。)

(F)その他
タバコ、イビキ、偏頭痛、噛み合わせ等その他多くの検討すべき項目に関しては、その道の大家にお任せすることにする。

(G)終わりに
私の敬愛する先生が(万民は一人のために、一人は万民のために)という言葉を人生訓としていると語ってくれたが、それに倣って表現すれば、他の臓器と同じように、(口腔は全身のために、全身は口腔のために)という密接な関係が解き明かされつつある。
ゆえに、歯科医は単なるテクニシャンではなく、真にドクターになる必要性が生まれたといえる。歯科医にその自覚があるかないかは別にして。医科の先生は単に歯科医科の境界領域の分野を別々の捉え方で予防治療するのでなく、同じ認識だが、治療の分担が異なる領域の疾患、または同じ分担をする領域の疾患、として論じ、今後の方向性を探ることが今回のメインテーマと考える。








このホームページの著作権は平田歯科医院に帰属します。
Copyright (c) 2002 Dental hospital HIRATA. All rights reserved.